
昨年より、本紙などを通じて住宅業界の潮流が変わったとお話ししてきましたが、先日行われたメーカー・商社各社の経営トップの方々とのパネルディスカッション※1を通じて今年は需要が本格的に動くと改めて確信しました。今回は、パネルディスカッションの内容もふまえて、需要動向の見通しを再度お話しさせていただきたいと思います。

まず昨年を振り返ると、新設住宅着工戸数は129万戸(1月31日国土交通省発表)となり、9年ぶりの130万戸の大台に迫る勢いとなりました。需要が着実に顕在化した1年であるとともに、合板やフロアの欠品問題が起こるなど、波乱の年でした。夏季の天候不順や水害、耐震強度偽装問題を発端とした建築確認申請の厳格化による着工の遅れなどもあり、やや中だるみ感もありましたが、これは需要が単に先送りになっているということだと思います。つまり、今年1〜3月は住宅資材の動きが一層活発になると考えられ、事実、一部の資材ではすでに欠品が出ているという話も聞いています。

この「潮流の変化」のきっかけとなったのが、昨年3月9日の日本銀行(以下日銀)の量的緩和政策の解除でした。金利の先高観を受けて、金利動向に敏感な一部の富裕層による住宅取得の動きが加速したと思われます。
私は、当社のマンションの営業現場でこの動きの変化を感じ、「住宅需要が噴き出す」だろうという見方を持ちました。実際に、住宅取得に向けた活発な動きは東京・山手線内から23区、川崎市、横浜市へ、さらに神奈川県中部へと波及してきています。
7月14日のゼロ金利政策の解除で金利の先高観はより顕著になりました。日銀は「実質GDP2%程度の安定成長が長く続くことが日本の成長には望ましい」とし、緩やかに金利の引き上げをしていく方針です(本紙1月1日号)。2月21日の金融政策決定会合で政策金利が0.25%引き上げられ、0.5%になったことで、今後のさらなる金利先高観が強まったことは確かであり、これは今年の住宅需要へのプラス要因となると思います。
 
地価の上昇もますます顕著になっています。昨年7月1日時点での基準地価が三大都市圏で16年ぶりに上昇と報じられ、首都圏に続いて地方にも徐々に波及しており、一般消費者にもこの事実が実感できるようになってきました。
当社が横浜市港北区小机で昭和59(1984)年に開発したマンション用地の仕入れ値が83万円/坪だったのに対し、平成16(2004)年に隣地で開発したマンション用地では仕入れ値が61万円/坪でした(図1)。バブル崩壊以降の地価の値下がりは、20年前よりも安いという明らかな「下げ過ぎ」の状態だったのです。 このあと、平成16(2004)年をボトムに地価は反転し、「値戻し」しただけでなく、さらに上昇へ進み、直近の土地取引では一部でバブル崩壊後の平成7(1995)年と同じ水準にまで値上がりしている土地もあります。もはや「デフレ」という意識は完全に捨て去らなければいけません。
この動きは、決して首都圏や三大都市圏に限られたものではありません。首都圏と地方都市には必ずタイムラグがあり、今後、地方の政令指定都市や県庁所在地へ波及していくと考えられます。この潮流を、近い将来のご自身のエリアのものとしてとらえていただきたいと思います。
 
先日行われた、新春賀詞交歓会、新春経済講演会での業界を代表するメーカー・商社のトップの方々によるパネルディスカッションでは、今年の予測として住宅着工戸数はおおむね130万戸前後、日経平均株価は18,000〜20,000円という、全般的に明るい展望が聞かれました。その一方で、世界的な「資源インフレ」という状況下で、さまざまな資材のコストアップにより各社とも大変ご苦労なさったようです。順調な住宅着工により売り上げは好調だったものの、利益がついてこなかったというお話が多く聞かれました。すべてのメーカー様が値上げに踏み切れたわけではなく、自助努力で何とか対応されたものの、利益にはマイナスの影響が出たというのが実態だったと思います。
しかし、今年は各社とも製品価格の改定を提示しており、ほぼ値上げで足並みがそろっています。昨年は、南洋材合板やフロア台板の値上がりが顕著でしたが、今年は住設機器や木材も値上げの傾向にあります(図2)。「資源インフレ」の状況が続くなかで、今年は製品のインフレも川下に浸透していくと思われます。
 
以上のように、住宅業界では金利、土地、資材、もっと言えば将来の消費税率引き上げなど、すべてにおいて「上げ」の材料がそろっています。日本経済新聞社が四半期ごとに発表する産業天気図でも、マンション・住宅業界は引き続き「晴れマーク」となっており、さらにマンションでは価格が2割程度高い「新価格」へと本格的に移行するといった内容が書かれていました(日本経済新聞1月4日)。こうした見方が広がれば広がるほど、需要に拍車がかかり、「買い急ぎ」現象が高まるのではないかと考えています。
 
なかでも団塊ジュニア世代の需要が中心となって動くと私は見ています。団塊ジュニアと一口にいっても、一般に言われる団塊ジュニア(1971〜1974年生まれ)と実際に団塊世代の子供が中心となる「真性団塊ジュニア」(1975〜1980年生まれ)があるとされ(三浦 展著「下流社会」光文社)、約10年にわたって存在しています。
一方、「公庫融資利用者調査」※2によると、住宅金融公庫のローン利用者の平均年齢は、マイホーム新築が40.4歳、マンション購入が38.6歳、建売住宅が36.8歳となっており、36〜40歳が中心となっています。
また、日本では、バブル崩壊後のデフレの推移をなぞるように、平成元(1989)年に団塊世代が40歳に達したのをピークに、以後急速に40歳代の就労人口が減少しています(椛蝌a総研「人口動態等による今後20年間の世界観」)。しかし、これから団塊ジュニア世代が30歳代後半から40歳代へ移行していき、40歳代就労人口が増えていくことが予測されます (図3)。
一般的に40歳前後が最もエネルギッシュであり、公庫の調査からも分かるように住宅取得意欲も高くなってきます。現在の団塊ジュニア世代が26〜35歳であることを考えると、彼らが40歳に達するまで、これから5年後ぐらいをピークに10年近くにわたりおう盛な需要があることは疑う余地がありません。

10年にわたる団塊ジュニアの需要に対し、先述の「上げ」要因がプラスに作用すれば、「買い急ぎ」需要が一気に出てくる可能性があります。
当社の住宅事業部門の新年初売りとなる「新春ナイスビッグフェア」では、予想以上に多くのお客様が来場されました。今年の大きな特徴としては、ご来場者の年収水準や自己資金比率が高く、購買力が昨年以上に高まっていることと、団塊ジュニア世代の急増があげられます。
消費者の商品購入に対する態度についてスタンフォード大学のエベレット・M・ロジャース教授が提唱した「イノベーター理論」(図4)と照らし合わせて考えると、昨年3月の日銀の量的緩和政策解除直後の動きは、金利動向に敏感な富裕層や、地価の上昇に関する情報をいち早くキャッチした方々など、一部の層に限られていました。彼らは「イノベーター理論」で言うところの「イノベーター」や「オピニオンリーダー」に当たります。今後は、圧倒的多数を占める「アーリーマジョリティ」が本格的に動き出すことが想定され、「新春ナイスビッグフェア」に来場されたお客様に、その兆候を垣間見ることができたと感じています。
これはマンションに限ったことではありません。おう盛な潜在需要を背景に、ハウスメーカーや大手ビルダーでは2007年下期の着工見通しとして上期の110%以上を見込んでいるところが多くあり、今後ますます注文住宅や分譲の一戸建住宅にも波及していくと思われます。むしろ、今後お客様の動きを実感できないようであれば、よほどの危機感をもって臨まなければ生き残れないと言っても過言ではありません。

私は、平成19年の新設住宅着工戸数は135万戸以上に伸びる可能性があると考えています。それは、先高観を背景とした「買い急ぎ」に、建築確認の遅れなどによって着工がずれ込んだ分との需要が重なるためです。
そして、実際に135万戸が見えてくると、改めてさまざまな資材で欠品の問題が出てくるのではないかという仮説を立てています。昨年も、4月の「ナイスわくわくフェア」(東京ビッグサイト)以降、メーカー各社様に欠品のないよう、生産・供給体制の強化を強くお願いしてきましたが、現実としてはそれ以上に需要があり、欠品状態になったものがありました。今年も引き続き欠品の心配があり、アイテムによっては必ず起こると見て良いのではないかと思います。
在庫を減らし、いかに高速回転させるかという一昨年までのデフレ時代のビジネスモデルから脱却できていない会社がまだまだ多く見受けられますが、品物を持たないと売るものがなくなるということが現実になると思います。販売店様には、注文に結びついたらすぐに手配に動いて早めに手当てしていただくとともに、在庫して流通としてのダム機能をしっかりと果たしていただきたいと思います。
 
「上げ潮」の時代において、「現状維持」では負け組になってしまいます(図5)。当社は「上げ潮」に乗り、さらにそれを超える「超流」を皆様とともに巻き起こしたいと考えています。
ピーター・F・ドラッカーが「経営とは需要を創造するもの」と言っているように、「需要創造」こそがこれからの時代を勝ち抜くキーワードの一つです。待ちの姿勢では決して「超流」を起こすことはできません。おう盛な潜在需要が目の前にあるのですから、これを顕在化し、しっかりとつかんでいくことが大切です。
そのために、当社では「ナイスサポートシステム」による間取りや外観デザイン、標準仕様書の作成をはじめ、営業トレーニング、IT化支援のご提案など、受注をつかむための支援策をフルラインでご提供しています。また、3月24〜25日に東京ビッグサイトで開催する「ナイスわくわくフェア」を皮切りに、今年も「住まいの構造改革」をテーマとして住宅の耐震化に向けた具体的なご提案と情報発信を行っていきますので、皆様にはぜひこの場を有効に活用していただき、団塊ジュニア世代を核としたおう盛な需要を獲得していただきたいと思います。
当社は、年間約1,500戸のマンション、約250戸の一戸建住宅を供給しており、企画、設計、販売まですべて一貫して行うことができるノウハウを強みにしています。これを販売店様、工務店様にご活用いただき、皆様とともに日本の 「素適な住まいづくり」 にお役立ちしていきたいと考えています。

自動車業界は、多くの部品メーカーから「生産財」を集め、それをアッセンブルし、車という「耐久消費財」をお客様にご提供しています。これを木建ルートに置き換えると、「生産財」に当たるメーカー様の製品を、ナイス梶A販売店様を介して流通し、工務店様がそれを実際に組み立ててお客様に「家」という「耐久消費財」としてご提供しています。大手ハウスメーカーに対抗するには、ナイス梶A販売店様、工務店様が志を同じくし、三位一体の「アッセンブルメーカー」となることが必要なのです。
そのカギとなるのが「品質」です。当社においても、今年は「品質元年」としてさらにしっかりと組み立てていくつもりです。耐震強度偽装問題などを背景に、最終需要家の「品質」に関する意識は一層高まっています。どんなに優れた製品を供給していても、施工現場でしっかりとした住まいづくりが行われなければ、最終需要家には支持されません。5S(整理、整とん、清掃、清潔、しつけ)の徹底をはじめとして、施工現場とそこに携わる職人さんの教育など、業界全体で取り組むことによって、「クレーム・ゼロ」のすばらしい住まいづくりに結びつけられると強く感じています。

当社では「お客様の素適な住まいづくりを心を込めて応援します」という経営理念を掲げて取り組んでいます。私たちの仕事は、お客様から「ありがとう」と感謝のお言葉をいただくことができ、家族づくり、人づくり、引いては日本の未来に貢献できる、大変やりがいのある仕事です。だからこそ、常に「心を込めているか」と自問自答し続けなければならないと思います。
平成13年からは「住まいの構造改革」をテーマに住宅の耐震化に取り組んできました。阪神・淡路大震災の悲劇を二度と繰り返してはいけません。住宅1棟分の資材を供給することが、ご家族の生命、財産を守るという強い使命感を持って、これからも真剣にこの問題に取り組んでいきたいと思います。
そして、販売店様、工務店様、メーカー様と、当社とともに「素適連合」を形成し、「上げ潮」を超える「超流」を巻き起こしていくために、全力で取り組んでいきたいと思っています。
最後に、今年も引き続きナイスビジネスレ ポート紙上において「潮流を読む」シリーズを展開し、住宅産業の需要動向をはじめとして、市況やメーカー様の戦略などの生きた情報を積極的に発信し、皆様方の事業にお役立ちできるように努めますので、ぜひともご期待いただきますとともに、ご愛読をよろしくお願いいたします。 |